「第二回 カスタマーサクセス天下一武闘会 -」に行ってきた
第二回 カスタマーサクセス天下一武闘会 - CS HACK #23 に参加して来たのでレポート。 cshack.connpass.com
イベント内容
カスタマーサクセスに取り組む企業による、施策のプレゼン対決。
今回のテーマは「直近1年間での月次収益(MRR) or ACV (一顧客あたりの年間平均単価) 向上施策」。カスタマーサクセスにより、どう売上を拡大させることができたのか。登壇する4社は何を考え、施策を実行し、どんな成果を出したのか。予選2試合(?)、決勝1試合の計6回の白熱したプレゼンが行われたので、その内容と感じたことをアウトプットします。
登壇者
予選A組
- 株式会社トレタ カスタマーサクセス マネージャー 鈴木 高太郎
- 株式会社ヤプリ カスタマーサクセス部 部長 市川昌志
予選B組
- App Annie Japan 株式会社 Customer Success Manager 大滝 徹也
- 株式会社ABEJA カスタマーサクセス&カスタマーサポート マネージャー 丸田 絃心
予選A組プレゼン
トレタ アップセル・ターゲットを見つけるまで
- サービス内容
- 予約台帳のオンライン化、一元管理
- オプション
- POS連動 MRR¥4000
- 電話連動 MRR¥10,000
- グルメ媒体との連動 MRR¥10,000
- クライアントのサクセス=繁盛 と定義
- トレタの課題
- CS一人あたりの担当=1,000店以上
- 営業、商談可能な時間=アイドルタイムの3時間
- 担当数が多く、コミュニケーションが取れる時間が限られている
- 顧客を絞る必要があった
- 顧客にフィットした提案をする必要があった
- 課題に対する打ち手:顧客の可視化
- 活用度マトリクスの作成
- 顧客のステージ×ヘルススコアによってセグメントを分ける
- セグメントに応じて施策、打ちてを決めて提案していった
- フィジビリ時のルール=とりあえず100件やってみる
- 手応えが有った
- アップセルが出来たクライアントの傾向が見えた
- 活用度マトリクスの作成
yappli 半端ないアップセルへの道
- サービス内容
- プログラミング不要でアプリが制作できる
- 大手企業を中心に導入、アパレル、商業施設、通販、銀行、学校法人、等
- マーケティング領域から、社内システム、人事等にも利用が広がっている
- カスタマーサクセスへの取り組み
- 会社のミッション(?)に「カスタマーサクセス」が入っている
- カスタマーサクセス本部が存在、体制が整っている
- アップセル商材が豊富
- 営業段階からCSが介在し、アップセルのプランが組まれている
- アップセルのパターン
- 既存での横展開
- 既存契約企業が別アプリにも導入
- Push許可端末数
- 料金体系が「Push許可」されている端末数で決まる
- 基本、ダウンセルが無い
- 顧客のアプリが成長するにつれて費用が上がる=アップセルしやすい
- サクセスすると自動的に売上する商品設計になっている
- 既存での横展開
- 売上構成比
- 新規導入=70%
- アップセル、更新で全体の30%
予選A組・感想
ロータッチモデルのトレタ社と、ハイタッチモデルのyappli社の対決。
トレタ社は圧倒的な担当店舗をいかに効率的にアップセルにつなげて行くかを追求した仕組みを構築。yappli社は商品、事業組織をアップセルまでつながるよう設計したうえで、当てはめられる商品の選択肢を数多く用意することで様々なクライアントのサクセスストーリーに対応できるようにしている。
同じ”カスタマーサクセス”でも、対象クライアント層や単価によってここまでアプローチの方法が違うのか、と思うほど対照的な2社だった。
yappli社が時間内にプレゼンが終わらず、本題の内容に踏み込むことが出来なかったのがもったいなかった。。
予選B組プレゼン
App AnnieとExisting Business
- 売上
- データのデリバリー量で決まる
- アップセルの例:対象国の追加、カテゴリーの追加、プラン変更
- 行動指標
- surpriseを減らそう
- 日々の活動
- ハイタッチとロータッチの間で日々活動
- 定期的なコミュニケーション
- リアルな声を拾う
- 30社ほど担当、全顧客に対し、Qごとに必ず1回は訪問
- 訪問の目的
- ヘルスチェック
- トレンドのアップデート
- データのチラ見せ(アップセルに関わる)
- 結果
- アップセルフォーカスアカウントの選定
- 6アカウント確定、4アカウント交渉中
- チャーンの減少
- 訪問の目的
ABEJA コミュニティタッチのアップセル戦略
- サービス内容
- GAのリアル店舗版
- 店舗内のセンサーで顧客の動きを把握
- アップセルにおいて大事なこと
- 顧客の課題を作り出すこと
- 課題=理想と現実のギャップ
- サービスの良さを伝えてもらうこと
- サービス提供側ではなく、利用者から伝えてもらう
- 解決策:コミュニティタッチ
- 顧客の課題を作り出すこと
- コミュニティタッチとは
- 利用者が成功体験を共有してくれる→新規のクライアントを連れて来てくれる
- 紹介を受けた新規のクライアントが既にオンボーディングを受けた状態になる
- オンボーディングの時間が半分に短縮出来た
予選B組・感想
いずれもハイタッチモデルの2社によるプレゼン。AppAnnie社は公表された情報が少なく、判断しづらかったが、突然のチャーン等「surpriseを減らす」ことを行動指標とし、そのために年4回全てのクライアントに訪問しヘルスチェックを行っているのはシンプルに凄いと思った。ABEJA社の”コミュニティタッチ”の手法は、海賊指標やマーケティングファネルのリファラル獲得のプロセスをカスタマーサクセスからのアプローチで仕組み化しラベル付したもの。グロースハックとかマーケティングの文脈で聞いていた話を別の視点から聞くと新しいモノの様に聞こえる不思議。
決勝プレゼン
トレタ カスタマーサクセスらしい売り方
- どのタイミングでアップセルを仕掛けるか
- オンボーディング期
- オンボーディング完了した瞬間に売り込む
- 契約後、使い方の説明を実施、紙の予約台帳を捨ててもらう
- 使い方説明後、紙の台帳を棄ててもらったことをTELで確認したタイミングでオプションを提案する
- 目標達成したタイミング=次のステップ(アップセル商材)提案が刺さりやすい
- 稼働後のクライアント=サクセスマップ(店舗カルテ)の活用
- 店舗カルテ=課題リスト
- 顧客の課題に対して、どのチーム、プロダクトがどの様に対応するのかを検討
- 顧客にいかに喜んでもらうか
- ジョハリの窓の「秘密の窓」を意識
- クライアントのコンディションに合わせて、対応を分ける
ABEJA ハイタッチのアップセル戦略
- なぜアップセルは起きるのか
- サクセスマップの作り方
- 顧客ごとに課題も目標も異なるため、画一的なフォーマット化は難しい
- 経営〜現場までを巻き込んだ、ワークショップの実施
- クライアントあるある
- 助言を嫌う、行動しない、社内で合意が取れない
- ワークショップを行うことで、自分ごと化される、行動レベルに落とし込める
- ワークショップで確認すること
- あるべき理想像
- 現状
- ギャップ(課題)
- 解決策
- ワークショップで出てきた確認事項をマッピングし、まとめるとサクセスマップが出来上がる
決勝・感想
両社圧巻のプレゼン。ロータッチvsハイタッチの対決になったため、単純に比較は出来ないが、ロータッチのトレタ社は数多くの試行錯誤を繰り返し、膨大なクライアントを仕分けることで効率的に捌く仕組みを構築。一方のABEJA社はクライアント全体を巻き込んだワークショップを実施することで、クライアントが自ら課題と解決策に気づき、自走するまでのロードマップ(サクセスマップ)作成の手助けを行う。ここまでしたらコミュニティタッチもリファラルもそりゃ機能するわ、と納得のいく究極のハイタッチモデル。
本題と全然関係無いけど「顧客のペイン」をプロダクトで解決する、というよくある考えがイマイチ腹落ちしていなかったのですが、トレタ社の「ジョハリの窓」を顧客とプロダクトとの関係にあてはめる、という話を聞いてスッキリしました。顧客が気づいていることにアプローチしても、顧客の期待値を上回ることは出来ない、と理解。どこかで使おう。
アプローチの方法は全く違えど、どちらも顧客の”サクセス”を把握し、その実現に向けてどの様に伴走しながら商品を当てはめて行くか、revenueにつなげて行くか、までを業務に落とし込み仕組み化している点は共通していて、組織としての強さを感じたプレゼンでした。
まとめ、感想
刺激的であっという間の2時間だった。自社のプロダクト、業務フローにどこまで落とし込めるかが大事だとはわかってはいるものの、各社の取り組み内容が凄すぎて正直、どこから手をつけたものか。。 笑
各社共通していたのは「顧客のサクセスは何か」をそれぞれのやり方で把握し、カスタマーサクセスのプロセスにしっかりと組み込んでいること。教科書どおりではあるものの、「カスタマーサクセス」はそれが前提条件である、ということを改めて感じたので、まずは改めてそこからしっかりと向き合っていこうと思います。
それと、普段参加している不動産系のセミナーと客層が全く違って若い!女子多い!w 話の内容も、いつものセミナーだと「こういうことをやって上手く行ったので商品化しました、買って下さい」ってオチがつくのが、全くそんなことなく、成功事例をお互い共有してみんなでハッピーになろう!的な前向きな空気にあふれていて、不動産業界とIT業界でなぜこんなにも違うのか、としみじみ感じました。既存プレイヤー、既得権の有無なんだろうな、きっと。