イベント「カスタマーサクセス(CS)×レガシー産業」に行ってきた
イベントレポート『カスタマーサクセス(CS)×レガシー産業〜 彼らはいかにITを受け入れたのか 〜』
こちらのイベントに参加して来ました。
医療 / 製造 / 建設業界は日本においてIT化が遅れている代表的な業界。 業界ならではの商習慣や目には見えないしがらみ、ITリテラシーが総じて低かったりとレガシー産業にITサービスを浸透させ、顧客を成功へと導くためには多くの労力や施策、サポートを必要とします。いいプロダクトを提供したとしても、生半可なサポートでは浸透しない、それがレガシー産業の大きな特徴といえます。
FacebookのTLに告知が流れて来た時から楽しみでした。イベントの説明の時点で共感出来ることこの上ないw
盛り上がりを見せている”カスタマーサクセス”ですが、B向け、特にレガシー産業や中小企業を対象にした情報はなかなか得られる機会がないため、非常に有意義な会でした。CSに限らず、Sales、プロダクト開発、etc…同じ軸で職種を変えてもニーズがありそう。
イベント・メモ
登壇者紹介
メドレー 小川さん
- ヘルスケア分野の課題解決(求人、メディア)
- 「クリニクス」オンライン診療を可能にするアプリ
- 行動規範「凡事徹底」「未来志向」「中央突破」
アペルザ 武末さん
- アペルザ:製造業向けITサービス
- アペルザのミッション「ものづくりの産業構造をリデザインする」
- 製造業市場:22.6兆円 中間市場:8兆円→これをリプレイスする
- 製造業におけるEC、マッチング、メディア事業
- ニューレボの経営顧問
シェルフィー 松井さん
- 建設業向けITサービス
- 市場規模:4兆円
- 過去5年で労働者が30%減少、資材費が高等→今あるリソースの最大化
- 多重構造による無駄な中間マージン(年間6.9兆円)
- 商業建築における日本最大級のプラットフォーム
オンボーディング&ハイタッチの手法
レガシー産業のユーザー特性という観点から、導入支援で苦労したこと、またそれをどう解決したか?
小川
- 営業からCS担当への切り替えがうまくいかない
- CS担当も必ず1度は訪問する
- 営業からCSに切り替える前に営業から切り替え後の流れをきちんと説明する
- CSが訪問することで、事業がスケールしにくくはならないか?
- →目下の課題。顧客によって対応の濃淡を分ける等の検討はしている
- 営業からCS担当への切り替えがうまくいかない
武末
- クロージングの設定
- ほっておくとなかなかオンボーディングしない
- 売上を上げるための商材であるため、特集のタイミングを逃さないよう期限を切って行く
- CSへの引き継ぎ
- 営業は外勤ゆえにすぐに対応出来ない、CSは内勤なのですぐに対応できる、とクライアントへ伝えると、CSに連絡してもらいやすい環境が創れる
- クライアントから連絡が来るようにする為に何か仕組み化しているか?
- クロージングが重要。特集に向けて〆切を切っておくと、機を逃すと売上があらなくなるため、わからないことがあれば連絡せざるを得ない状況を創れる
- クロージングの設定
松井
- Salesの時点で、ミッションやビジョンに共感してもらえているかどうか
- Webからの登録者よりも、営業が口説いた登録者の方がロイヤリティが高い
- ユーザーの利用ステップを4つのステップに分けて、一つずつステップアップしてもらうようにしている
司会者質問
- 業界のペインに対してサービス提供しているか?
- 小川:オンライン診療は「やらなくて良い」サービス。そこにペインが有るわけではないため、サービスが目指しているものへの共感の方が大事
ハイタッチ、Techタッチ、ロータッチはどんな基準で決定しているか
- 武末
- Techタッチは基本やらない。基本訪問。
- ハイタッチでは、クライアントが気づいていない効果を可視化することを行っている(安価なBIツールを利用したダッシュボード機能を提供)
- 効果があろうがなかろうが、全データを開示し、効果があれば共に喜び、無ければ対策を検討する。顧客と一緒に考えるパートナー。
- 小川
- 全クライアントに対してハイタッチを実施。
- 松井
- 基本ハイタッチ。
- 一日3回、登録者のライフサイクルに合わせてコミュニケーションを図っている。
- ユーザーにログインさせるために、情報を隠す等の手を使っていたが、ユーザーに無駄な時間を使わせていると判断してやめた。
- ゼンデスク等を使っていたが、オンラインマニュアル等は一切見られない。ハンバーガーメニューがメニューだと思われないため、文字で書く等の工夫もしたが、それでも見ない。
- メールに全部キャプチャ貼ってテキストで説明しないとわからない。
ユーザーの継続的な利用のために取り組んでいる施策
- 小川
- オンボーディングまで4回訪問、公開から2ヶ月後までに予約が入るように提案している。
- 2ヶ月間予約が無いとほぼ100%解約されるため
- 患者への案内方法〜オンライン診療までの一連のプロセスについてヒアリング実施、課題抽出→改善提案のサイクルを回している
- 武末
- 松井
- マッチングサービスであるため、発注者・施工会社それぞれのケアが必要。特に、発注者側には超ハイタッチで接している
- 発注者側はぼったくられたくないため、受注者側に無駄な労力を強いがち。これが進むと場が荒れる
- サービス提供者側で受注者側(商品)の質が高いように見せる工夫が必要
組織&チーム作り
初期の運用体制や取り掛かったこと
- 小川
- 以前は今以上にハイタッチだった。毎月オンライン面談を行っていた。
- メリット:チャーンレートは今より良かった
- デメリット:現場の疲弊、顧客が自走せずCSに甘えがち。顧客満足度は高いがアクティブ率は低いという良くわからない状況に陥った。
- 毎月の面談をやめ、2ヶ月以内のオンライン予約獲得にフォーカスした
- 営業からCSへの引き継ぎは顧客情報を「カルテ」として共有している。
- SalesForceを超カスタマイズし、1社あたり3スクロール分くらい情報を持っている
- 以前は今以上にハイタッチだった。毎月オンライン面談を行っていた。
- 武末
- 人員をかけすぎない、オペレーションエクセレンスの追求
- 前職で500件/月のCS対応を行っていた。その結果、空気を吸うように顧客のことがわかるようになった、運用を突き詰めて考えられるようになった。
- 初期は営業との連携が大事。上手く行っていないと、オンボーディング・教育コストが高くつくため、営業からサービス導入の目的、背景を「カルテ」として共有している
- 松井
- サービス立ち上げ時に、現場に訪問し「現場で何が行われているのか」を徹底的に調査した
- 現場で調査した内容をQAに反映し可視化したことで、クライアントの対応が行いやすくなった
IT導入のハードルが高いユーザーに向き合うためにチームづくりで意識していること
- 武末
- CS対応は全員、元営業担当。クライアントのことがわかっていないと意味がない、クライアントに伝わらない。
- クライアントのことが想像できるかどうかがものすごく大事。
- クライアントを教育し、クライアントにサービスや会社のスタンスを理解してもらうことが大事。
小川
- CS担当一人ひとりがやることが多くタスクフルであるため、CSメンバーがオンボーディング以外の作業に頭も時間も使わない様な環境を提供できるようにしている。
- 例:アポ取りはアシスタントに任せる、等
松井
- 雰囲気、環境作り。CSは疲弊するため、話しやすい空気づくり等が意外と大事。
- ホスピタリティの高いだけでなく、自分は楽したいタイプの人がいないと仕組み化・組織化が上手く進まない
質疑応答
オンボーディング完了は期間の経過なのかどうか
- 小川
- 期間でおいている(公開から2ヶ月間)、その後はサポートデスクで対応。
- 定期的にクライアントから評価を回収、内容に応じて個別にサポートを実施
アラートがならないクライアントのケアはどうしているか
- 武末
- 小川
- メルマガ配信を実施。政府の通達内容の解説、他業者の取り組み等を定期的に配信。
- 武末
- メルマガめちゃくちゃ重要。レガシーな業界であれば、ITツール利用者、検討者=イノベータとみて間違いない。
- スタートアップであれば、効果事例や導入事例、サービスのアップデート等は常にあるはず。ステップメール等ではなく、テキストメールの一斉送信で十分。HTMLは非対応の場合がある。
感想
登壇した3社ともに、『クライアントとの向き合い方は訪問を前提としたハイタッチ』『Salesの時点でサービスのビジョンに共感を得られていることが大事』『オンラインマニュアル等のTechタッチは効果が無い』といった、浪花節営業かな?と思うようなことを言っていたのが非常に印象的でした。レガシー産業ならではなのか、スタートアップあるあるなのか。。
特に、メドレー小川さんの『オンライン診療は「やらなくて良い」サービス。そこにペインが有るわけではない』という発言は非常に共感できました。
新規マーケット創出タイプ、既存業務の効率化(ペーパレス化)タイプのサービスは、クライアント側からすると「それが無くても(今は)業務が回っている」状態にあるはずで、その前提の中では、サービス利用後に期待する未来に対して共感が得られない限りサービス導入は期待出来ないし、各社が口を揃えて言っていた『クライアントが何に共感しどういった未来を期待してサービス導入を決めたのかをSalesからCSへ引き継ぐ』ことが出来ないと、その時点でクライアントの期待を裏切ることになり、カスタマーサクセスが実現できなくなる、ということなんだろうな、と感じました。