「SaaS Product Manager Meetup vol.1 」に行ってきた
「SaaS Product Manager Meetup」は、SaaS事業を展開する各社のプロダクトマネージャーがパネルディスカッション形式でお話するミートアップイベント。
トレタ、Sansan、ネットプロテクションズ、各社のPMがどんな考えを元にどの様に優先順位をつけてプロダクト開発を行っているのかを知りたく、イベントに参加して来たのでレポートします。
SaaS Product Manager Meetup vol.1 ~市場のパイオニア企業たちによる裏側ぶっちゃけトーク~
イベント概要
- 主催:株式会社ネットプロテクションズ
- 日程:2018年11月14日(水)19:00〜20:30
netprotections-event1.peatix.com
登壇者自己紹介&事業紹介
Sansan株式会社
- 登壇者
- Sansanプロダクトマネージャー 峰松 隆太郎
- プロダクト開発で大事にしていること
- なんの業務を置き換えるか 業務が無いと使ってもらえない
- ユーザ層 toC向けサービスを参考にすると使いこなせなくなる人が多い
- 2:8 一部のイケてる人だけが使えればよいのかどうか
- 今後目指していきたいこと
- アプリファースト 業務でスマホ>PCになっている例はあまりない
- 他サービス連携
- グローバル
- 組織について
- プロダクト>プロダクト開発部>開発チーム
- 開発チームの構成はPM1名、UI/UXデザイナー1名、エンジニア3名
株式会社トレタ
- 登壇者
- COO 吉田 健吾
- 大事にしている考え方
- Issue First
- Respect All
- DIVE
- トレタの存在意義=外食産業が抱える課題を解決する
- 事業内容
- 市場規模とシェア
- 予約を取る可能性のあるお店(TAM):8.5万店
- 繁盛店:予約必須/予約管理必須な店:約1万店
- 準繁盛店:繁盛店に到達可能な店:約3万店
- 参考:ぐるなび正会員(月4万円):約6万店
- 市場におけるポジション
- 予約台帳シェアNo1(33%)
- 予約を取る可能性のあるお店(TAM):8.5万店
- プロダクト設計における要点
- ATMを使える人なら誰でも使えるUI/UXを目指している
- 紙台帳を捨ててもらう
- 飲食店の仕事を増やさない
- 予約事故誘発につながる機能追加はしない
- プロダクト開発の優先順位
- 飲食店の業務プロセスは店舗ごとに独自の進化を遂げているケースが多い。それをきちんと一度捨ててもらう必要がある
- 店舗からの要望を鵜呑みにすると事故率が上がって顧客のためにならないこともある
- 開発内容がプロダクトのビジョンに合致しているのか深掘りして考える
- 考えに考えた結果をプロダクトに反映しているため、創業時からトップページのデザインはほぼ変わっていない
- 組織
- つくる側:47名 売る側:61名 支える側:20名
株式会社ネットプロテクションズ
- 登壇者
- NP掛け払いプロダクトオーナー 中原 雄一
- キーワード
- 本来、自然状態で人は創造的だし、幸せになれるはず
- 妨げている歪みを0ベースで変える、アタリマエを作る
- 事業:歪みをなくす 組織:ティール
- 組織設計=Nearer
- 事業紹介
- NPかけ払い(債権譲渡型決済サービス)
- B向けの決済関連のサービス
- サービスミッション、ビジョン
- 取り組み方(Growth Point)
- グロース、オペレーション、リスクのバランス
- 事業推進、組織構築のバランス
- 「なくてもいい」を超える
- Our Way
- 長期視点
- ユーザー変革不要なプロダクト
- 全員で考える
パネルディスカッション
PMFを達成するまでのHard thingsは?
- ネットプロテクションズ
- トレタ
- Sansan
- 代表が「名刺管理」に対して課題に感じていたことがプロダクトの原点
- 「そんなコトに金は出せない」壁は存在した
- 手間が減ることではなく、トップラインに効くことをアピールして振り向いてもらう
- 名刺管理とは外れるが、営業フックになるような機能を作った(mail配信、SFA)
このビジネス実はここが難しい!それを超えれた強み・秘訣は?
- Sansan
- 経営層が思っていることと、実際に使うユーザーとで考えることが異なる
- 現場での導入を進めるために、初期名刺データの取り込み代行要員の派遣を行っているほど、入り込んでやっている
- CSが導入時の取り込み枚数をKPIに置いている
- トレタ
- 紙に戻られるとチャーンにつながるため、CSにはコストを投下している
- もともとは営業が商談からオンボーディングまで面倒を見ていたが、初期の営業メンバーの得意不得意に応じて分業するようになった
部署間摩擦は存在する?どう対処している?
- ネットプロテクションズ
- 重要な意思決定の場には全員が参加している、議論にとにかく時間をかけている
- 議論にコストをかけている分、摩擦は少ない
- Sansan
- 社長自身が「プロダクトの会社」であることを明言しているため、営業からの要望を反映しなくてもそれほど摩擦は生じない
- 納得してもらえるだけの説明責任は果たしている、情報共有に時間を割いている
開発の優先順位はどうやって決めている?
- トレタ
標準実装するかどうか迷った機能は?その背景は?
- トレタ
- 座席の配置図(レイアウト)機能開発
- 他社からの乗り換えを検討している大手から要望を受けたが、当時はプロダクトとして必要性が見いだせず、開発を見送った。(結果失注)
- 他店舗の予約も受付けられる機能を実装した際に、飲食店スタッフが他店舗の座席レイアウトを把握しているはずが無く、他店舗の座席図を把握する機能が必要になり、結局作った
- 座席の配置図(レイアウト)機能開発
- Sansan
- 画像データのテキスト化
- 人手で登録していることで担保出来ている「データの正確性」がプロダクトの肝
- 画像データを受付けてしまうと、サービスの信頼を損ない兼ねない
- 一度、大手からの要望で頑張って画像データを登録してみたことがあるが、データ元がイレギュラーであるがゆえに、あとから色々な不整合が起きてしまった。その反省から、今でも要望が多い機能ではあるが、やらないと決めている。
- 画像データのテキスト化
理念に合致した中途人材の採用、時間がない中での育成、どうやっている?
- トレタ
- 理念に合わない人が入ってきて困ったケースはない
- 採用の入り口の時点ではトレタのことをよく知らない人が大半
- 採用プロセスの初期の段階で理念でふるいにかける
- ネットプロテクションズ
- カルチャーギャップに苦しんだ時期が一時期あった
- カルチャー、理念をしっかり伝える様にしている
- Sansan
- 採用の入り口でビジョンへの共感はしっかり見ている
- 明確に手法や基準には落とし込めていない
- PM:事業成長、数値に向き合って、プロダクトに落とし込める人
- PMになる前の段階で、アソシエイトPMとしてサポートに入ってもらう
- 採用の入り口でビジョンへの共感はしっかり見ている
競合との向き合い方
- Sansan
- 情報を仕入れるようにはしているが、意識はあまりしていない
- 競合に負けるケースが増えて来たときに、その要因を検討する様にしている
- トレタ
- 基本的にはあまり気にしていない
- 最終的に飲食店に提供したい価値は他社とは違うと考えている
- ただし、2番手、3番手がトレタとの差別化のために開発した機能の中で、もっと早く作っておけば良かった、と感じる機能はいくつかある
- ネットプロテクションズ
- 競合の発表する数字等を気にしてしまうと、自社がやりたいことを歪めてしまうことになりかねない
- マーケティング施策は見るようにしている。自社がやった施策を他社も真似しているのを見ると、施策として良かったのだと感じる
- そんなに強くない競合が出てくることがプロダクトを強くする
よいPMとは
- Sansan
- 優先順位をどう決めるか=究極の課題、答えがない。答えがないことについて、自分なりに説明ができる人
- 一緒にものづくりする人ときちんと関係が作れること
- トレタ
- 自分たちのプロダクトの提供価値にフォーカスできる人。それによってつくる側を盛り上げることができる人。
- 経営、開発、ユーザー、色々な人の間で関係性が作れる人
- ネットプロテクションズ
- プロダクト、事業のつくる未来に本当に共感できている人
- コアな強みを軸に、関係するメンバーとうまく関係性が作れる人。バランスがうまく取れる人。
まとめ、感想
採用シーズンに向けてSaaS関連のイベントが増えてるのは本当にありがたい。カスタマーサクセスやセールス系のイベントはどうしても「こんな施策やってます」的なテクニカルな話になりがちなのに比べ、今回のイベントは対象がプロダクトマネージャーなだけあってプロダクトや事業のバリューやミッションへの共感、といったいわゆる”エモい”(こないだ社内でエモいって言ったらそれはもう死語だって若手にバカにされた。余談)話が多かった様に感じた。
プロダクトマネージャーの話を聞いていて感じたのは、テクニカルな話の前提として、PMFを果たしているかが本当に大事で、PMFに達していない中でテクニックに走っても何も良いことなさそうだな、というそもそも論。
そもそも、PMFというからには、対象となるMarketの定義、Marketに対して提供するProductの価値・バリューがFitしていることが大前提にあるわけで、登壇者が各々自分たちが想定している対象のMarket規模やユーザー像、それに対してProductがどういう価値を提供しているのか、それを実現するためにはどういう組織で有るべきか、までを、当たり前のコトの様に、一連のストーリーの様に語っているのを聞きながら、今更ながら改めてストンと腹に落ちた会でした。
あの人達、多分、寝ても覚めてもProductとMarketのことしか考えてないんだろうなぁ。そんな人しかいない会社は絶対に強い。