「不動産テックセミナー:不動産テック協会設立イベント」に行ってきた

11/28に開催された、不動産テック協会設立イベントに参加して来たのでレポートします。

不動産テック協会とは?

不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産会社・テック企業単体では実現出来なかった様な業界ルールの策定やビジネス機会の創出を目指して設立された団体。

セミナー概要

  • 日 時:2018年11月28日(水) 19:00〜22:00(受付開始18:30)
  • 会 場:fabbit Global Gateway Otemachi(大手町)
  • 主 催:一般社団法人 不動産テック協会

イベント詳細ページ
【11月28日(水)】不動産テックセミナー:不動産テック協会設立イベント 〜不動産テック協会活動報告と最新版不動産テックカオスマップ発表〜 – 不動産テック協会

会場は某不動産フランチャイズ企業が運営するシェアオフィス、fabbit Global Gateway Otemachi。不動産賃貸の業界団体も入っている朝日生命大手町ビルの2階が会場。設営のため会場に到着したら、パネル前で代表理事の武井さんに遭遇。せっかくなのでパネル前で記念撮影させてもらいました。 f:id:wadamako:20181128232111j:plain

挨拶

代表による開会挨拶

代表理事の赤木さんから開会の挨拶。 f:id:wadamako:20181128232324j:plain

理事・顧問のご紹介とご挨拶

f:id:wadamako:20181128232440j:plain 理事・顧問多い!顧問に不動産業界の”顔役”のような顔ぶれが揃っていて、しっかりした団体、という印象◎
会場は160席がほぼ満席で熱気むんむん。他のテック系イベントと比べると、男性比率とスーツ着用率、年齢層が高い!不動産業界ならではの参加者層でした。

講演① テックと不動産市場の未来– 顧問 長嶋修氏

ホームインスペクションについて

  • 業法が改定され、インスペクションが義務化された
    • しかし、何も起きていない
    • インスペクションについて、物件のことがよくわかっていない宅建士が重要事項説明を行っているため
    • インスペクションを浸透させたいのではなく、瑕疵保険を薦めたい思惑がある
  • インスペクターの役割
    • 建物、不動産のよくわからない所を明らかにしていく
    • 買い主と同行し、物件の診断を行う
  • 他国の状況
    • イギリス
      • 売り主がインスペクション情報を提供する仕組みだった
      • 物件流通が停滞するようになったため、買い主が調査する仕組みに代わった
    • アメリ
      • 売り主側が提供する仕組みだった
      • インスペクターが不動産会社に忖度するようになったため、買い主側が提供する仕組みに代わった
    • 売主側からの情報提供でうまくいっているケースは無い
    • 買主側にとって物件の情報が意味有るもので無ければ意味がない

不動産データベースについて

  • 不動産データベースの仕組み
    • データベース化することのメリット
      • 不動産業務の効率化
      • インスペクション情報を加えることで、中古住宅流通を活性化する事ができる
    • 国交省がやりたいこと=築年数を無視した建物価値の評価

コンパクトシティについて

  • 人口減少に伴い、従来の行政サービスが維持できなくなる
  • 全国で400ほどの自治体がコンパクトシティ化に取り組んでいる
    • 毛呂山町住居地域を絞ることで、地価向上を目指している
    • 中古住宅の評価がきちんとされていれば、住替えも行いやすくなる

まとめ

  • 中古住宅の価値はどうやって認められるか?
    • 主役は不動産屋でも売り主・買い主でも無く、金融機関
    • 金融機関が評価することで、物件価格が決まる
    • 中古流通市場を動かすには、金融機関に判断させられるかどうか。テック会社に期待したいポイント。

講演② JARECOの取り組み – 顧問 本間英明氏

米国不動産の市況

  • 日本不動産協力機構(JARECO)
    • 全米リアルター協会(NAR)との相互協定により、国際交流、調査研究、教育研修に関する共同研究、情報交換を実施
  • 全米リアルター協会(NAR)
    • 現状、130万人ほどの登録リアルター(不動産エージェント)が在籍
  • 米国不動産の市況
    • 2017年は史上最高の売買件数、2018年は若干下落したため、バブルではないかと言われている
    • NARのエコノミストは価格の下落は見られないとレポート

NARのDanger Report

  • NAR自身が投資家等に向けてレポートを作成している
  • 不動産エージェントにおける危機
    • マチュア不動産エージェントの増加
    • リーダーの不足
    • ベンチャー等、他業界からの新規参入
    • コミッション料の低下
    • ペーパーブローカーの増加、モラルの低下
    • NARの構造的欠陥
    • 地域の声が反映されにくい中央集権的構造
  • 様々な危機、リスクに対して取るべき挑戦と驚異に向けた対策をCEOが発表
    • 戦略的シンクタンクの構築、新しい戦略的ビジネス及び技術グループの確率、等

米国不動産のREテック

  • ビッグデータブロックチェーンの活用がトレンド
  • 入れ物ではなく、実装、効果のインパクトが評価される
  • 不動産業におけるテクノロジーの課題
    • 不動産テックを支える情報、データの標準化
    • メンバーシップ、ルールをいかに遵守するか
    • エージェントのITリテラシーの向上
  • 他国の仕組みを独自化するのではなく、きちんと取り入れるのが大事

講演③ 不動産テックは何をもたらすか? – 顧問 尹煕元氏

不動産という金融

  • 直近の30年で世界のあり様が変わった
    • ベルリンの壁の崩壊、Google、アマゾンの創業
    • 日本に於いて、インターネット人口が人口のほぼ50%に到達
    • モバイルの始まり
  • 2000年以降の日米の株価・住宅価格の変動は、リーマンショック後の下落から回復
  • 不動産は金融なのか?
    • リーマンショック
      • 2007年、米国での住宅ローンの聞きに端を発して、米国の住宅バブルが崩壊
      • リーマンブラザーズが破綻、米国政府は金融システムを支援するために7,000億ドルを拠出(国家予算の1/3ほどの規模)
      • 世界中の金融機関が破綻する可能性が急速に高まる
    • リーマンショックの発端
      • 2002年にブッシュ大統領が「全てのアメリカ人に自分の家を所有してもらいたい」とコメント
      • 2003年、低所得者でも家が買えるよう、法律を制定
      • 2005年、アメリカ全世帯の69%が住宅の所有者になる

テックが出来る事、クリエイターが為すべき事

  • テクノロジー:人間がそれまで出来なかったことを実現するための方法論
    • 人間のリテラシー、感覚はテクノロジーだけではダメ
    • AIは統計計算の延長
    • テックは素晴らしいが、最後はそれを人間がどう使うか
  • テックが出来る不動産屋のRe-Design
    • Design思考は分析思考とは異なり、アイディアの積み上げによるプロセス
    • 不動産の評価は情報の見え方に依存する
    • これまでは情報の探し方が重要だったが、情報が溢れるようになったいま、多くの情報の中から必要な情報を取捨選択出来るセンスが大事になる
  • 不動産テックがなすべきこと
    • これからのテック社会で不動産に関わるものは「人の夢を担う覚悟」がなければテクノロジーに翻弄される

不動産テック協会の概要 – 協会案内、入会会社紹介

  • 直近の目的
    • 不動産側の人と、テック側の人との交流を生み出す
  • 会員種別と会費
    • 正会員
      • 不動産テック関連の事業に携わるベンチャー企業等の法人
      • 東証一部・二部に非上場
      • 設立年数は問わない
    • 法人会
      • 正会員以外の会社、不動産会社
  • 入会状況
    • 約40社が入会
    • 近々で100社を目指す
  • 部会、活動
    • 情報化・IoT部会
      • クローリングに関する状況調査とルール策定
      • 不動産情報の利活用に関する状況調査と活用案の提示
      • 情報セキュリティの状況調査と対策案の提示
    • 流通部会
      • データベースフォーマットの検討とルール策定
      • 電子契約に関する状況調査と活用案の提示
      • クラウドファンディングの課題調査と対策案の提示
    • 業界マップ部会
      • 不動産テックサービスの状況調査
      • 不動産テックカオスマップの定期更新
    • 海外連携部会
      • 海外不動産テックの情報収集
      • 海外不動産テック団体との連携

部会活動報告

不動産テックカオスマップ最新版の発表 – 業界マップ部会

※近日中にプレスリリース、協会HPに掲載予定とのこと!

  • 前回から1.4倍程度に件数が増加
  • 不動産とテック、テックの中でも線引が曖昧
    • テックに強い不動産会社、不動産もやってるテック会社、等が存在
  • 不動産テックの定義
    • テクノロジーの力によって不動産業界によって新しい価値を生み出しているサービス

不動産情報集約化の検討 –情報化・IoT部会

  • 情報の階層:不動産関連の情報は3つのレベルに分類出来る
  • データ統合方法
    • 不動産データ一元化に向け、不動産テック協会内のデータ連携を進め、原則APIによる連携・提供を先行して進めていく(API網)

不動産テック市場調査

  • 不動産テック企業30社にアンケート調査
    • 不動産テックの事業領域
      • メディア、価格査定、VRの順に多い
    • 不動産業界に感じる障壁の有無
      • テックへの興味・関心が低い
      • 業界知識、業界団体へのアプローチ
      • 年齢層が高く、他業界からの人材の流入が少ない
      • データがまとまっていない、そもそもデータ化されていない
    • 不動産テック協会に求めること
      • 不動産会社とのミートアップ、引合せの場を設ける
      • 業界ルールの整備、官公庁との窓口
      • 業界の認知向上、認知拡大、情報発信

感想、まとめ

一口に”不動産”テックと言っても、カオスマップ制作にあたった方が「領域がまたがっているサービスもあり、線引が非常に難しかった」というように、賃貸管理、仲介(賃貸・売買)、リフォーム・リノベーション、価格査定、VR、IoT、etc,,,と多種多様。にもかかわらず、顧問3氏の講演が全て中古流通についての話だったところにギャップを感じて印象的だった。不動産業界のプレイヤーにとっては中古流通がメインストリーム、テック業界にとっては不動産市場の一部、どちらかというと縁遠い業界、といったような、認識の食い違い、潜在的な溝みたいなものが存在する様に感じてしまったのは考えすぎ??

あと、テック系のイベントでよくある、SNSに投稿されることを前提とした、ハッシュタグの用意とか「シェア禁止」のスライドとかが一切無いあたりに不動産業界らしさを感じました。セミナー等の場で発表された内容はNGと言われていない限りシェアされて当たり前、という感覚が不動産業界にも広まると、テック企業と不動産業界との溝も埋まっていくんじゃないかなーと思います。うまくまとめられませんが、「情報」に対する考え方が不動産業界とテック業界とで180度違う気がするんですよね。どちらが正解ということでは無いとは思いますが、ITの価値は誰もが情報の発信者・受信者になれることにあると思っているので、その考えに基づいて、今日のセミナー内容をシェアさせて頂きました!