読書履歴:人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門 / 中土井 僚

U理論入門

2016年7月9日読了。

内容・感想まとめ

『人と組織の問題を劇的に解決する』のサブタイトルに惹かれてジャケ買いした一冊。

U理論とは、大雑把にいえば「課題解決」のためのフレームワークのひとつで、PDCAが過去の行動や情報に基づいて行われるのに対し、U理論は、複雑な課題に対し自らの内面から湧き上がって来る『未来からの学習』へいかにたどり着くか、をベースにしている。

U理論のプロセス自体、フレームワークと言うには抽象度が高く、横文字を使って悟りに至るための禅のプロセスを解説されたような、分かった様な分からない様な妙な読後感。。

入門というだけあって、用語やプロセスについて細かくは解説されておらず、具体的な課題に関する挿話・事例が多め。そちらが分かりやすく「あー、あるある」と思わせるだけに、U理論自体がなかなか理解出来ないこととのギャップを感じて後半読むのしんどかった。。

マーカー引いた所(引用・抜粋)

U理論は大きく言うと、次の3つのプロセスによって成り立っています。 1.センシング:ただ、ひたすら観察する 2.プレゼンシング:一歩下がって、内省する。内なる「知」が現れるに任せる 3.クリエイティング:素早く、即興的に行動に移す
U理論が何かを端的に表現するとすれば、それは「何か(What)」でも「やり方(How)」でもない領域である「誰(Who)」を転換することで、過去の延長線上にはない変化を創り出す方法である
いま遭遇している問題が「煩雑な問題」なのか、それとも「複雑な問題」なのかを見極めることが重要です。(中略)「複雑な問題」は、望ましい状態は明確なのに、それに対して取った打ち手が必ずしも前進にはならないような問題を指します。
複雑な問題には3種類ある。その3つとは「ダイナミックな複雑性」「社会的な複雑性」「出現する複雑性」です。「ダイナミックな複雑性」とは、きわめて多様な要因が絡みあい、原因と結果が空間的、時間的に離れていることによって生じる複雑性です。(中略)「社会的な複雑性」とは、関係者の間で価値観、信念、利害が相反していたり、経験の差に開きが有ったりすることによって生じる複雑性です。(中略)「出現する複雑性」とは、これまで遭遇したことがない予測不可能性が高い変化によって生じる複雑性です。
PDCAサイクルような「過去からの学習」はこれまでも、これからも愛用され、引き続き効果を発揮すると思いますが、特に「出現する複雑性」のように過去に遭遇したことのない問題に対しては当然、過去からの学習には限界があります。U理論では、その過去からの学習に対して、「出現する未来からの学習」という新しい観点を提示しています。(中略)「出現する未来からの学習」は、自分の内面を掘り下げ、内側から湧き上がってくるものに形を与え、そこから肉付けをしていくというプロセスをたどります。
私たちは思い通りの結果が出ないとき、なんでもかんでも「何をどうやるか」すなわち、やり方の工夫で解決しようとします。それで効果がある時は問題ありませんが、効果が得られない時でも、何とかやり方を変えて乗り越えようとします。(中略)こういった状況に対して、U理論では「何を」「どうやるか」ではなく、その行動の「源(ソース)」すなわちその行動を「どこからやるのか」に着眼点を変えることを推奨しています。
畑から収穫を得る最初に取り組むことが土地を耕すことであるように、乾き、やせた「ソーシャル・フィールド(社会的な土壌)」を耕すことから、U理論のプロセスは始まります。(中略)内面の状況と場の質が「不毛」である時、ソーシャル・フィールドは痩せています。逆に、お互いの話に耳を傾け合い深く共感し合えている様な状態や、チームスポーツの試合において、チームメンバーと深い一体感を感じながらプレーに没頭している状態などは、ソーシャル・フィールドが耕され、深まっているといえます。
ダウンローディングとは「過去の経験によって培われた枠組みを再現している状態」を指します。「過去の経験によって培われた枠組み」の内側で、自分の思考や意見などが再現され、その思考や意見に意識の焦点が当たっている。すなわち、それに意識が奪われている状態を指しています。(中略)過去の枠組みは、それが成果に結びついているうちは生産性の向上に寄与しますが、繰り返しに空きてしまって行動量が低下したり、つねにその枠組みで処理してしまうがゆえに、環境が変化しているにも関わらず微細な変化を察知できなくなります。また、成果に結びつかない不適切な枠組みをずっと維持したりします。そうすると、イノベーションは実現できなくなるのです。
「観る(シーイング)」は、「頭の中で起きている雑念に意識を奪われず、目の前の事象、状況、情報に意識の矛先が向けられている状態」です。(中略)自分でスイッチをオン・オフと切り替えるように、「ダウンローディング」から「シーイング」へと転換することはできません。なぜなら「シーイング」というのは意識状態であって、行為ではないからです。(中略)「ダウンローディング」から「シーイング」への移行は受動的に生じるのであって、能動的に起こせるものではないという事です。では何によって、その意向が生じるのでしょうか。それは「自分の前提や固定観念を覆すデータ」に触れた瞬間です。
「ダウンローディング」になっている時には、「外の世界」から一瞬、一瞬飛び込んできている情報が自動的に取捨選択され、歪曲されていきます。その渦巻いている思考の壁をすり抜けて、「自分の前提や固定観念を覆すデータ」が自分の懐へと飛込んで「はっ!」とする驚きとともに「シーイング」への意向が生じやすくするのが「保留」と言う行為です。これが「待つ姿勢の質」を高める秘訣です。(中略)「保留」が習慣化している人は「センス・オブ・ワンダー(驚きのセンス)」と言われる能力が高くなり、一般的に好奇心旺盛な人、柔軟な人として周りから認知されるようになります。
ダウンローディングに陥ってしまう理由のひとつは、自分の「実感」が単なる「解釈」に過ぎないのにそのことに気付かず、事実と解釈を混同し、解釈を現実として扱ってしまうからです。(中略)メタ認知と呼ばれる「自分自身の認知自体を認知する」力を高めることも「保留」の力を高めるために有効です。メタ認知力が高まれば高まるほど、反応的な思考に没入せずにすむため、「保留」しやすくなります。
U理論が従来の問題解決手法やイノベーション手法と一線を画しているのが、「自分の中に他人の目玉を増やすこと」なくして複雑な問題を解決することが出来ない、ということにフォーカスしている点です。
「感じ取る(センシング)」は、「過去の経験によって培われた枠組みが崩壊し、枠組みを超えた側から今の自分や状況が見えている状態」です。(中略)この「センシング」状態になった時、「開かれた心」にアクセスする(中略)人として誰もが持つ、純粋なやさしさにアクセス出来ている状態が「開かれた心」にアクセスしている状態です。「開れた心」にアクセスしている時、雑念として頭の中を渦巻いている、評価・判断の声が嘘のように消えていきます。